2025年6月に、ロイターに面白い記事が出ていた。シティグループ証券の高島修氏が、日本が「トラス・ショック」のようなトリプル安になる可能性について書いたものだ。
日本も「トラス・ショック」に直面するのか、トリプル安リスクを探る=高島修氏
トリプル安というのは、円安・株安・債券安が同時に進む状態のこと。債券が売られて金利が上がり、株も下がり、それなのに通貨まで売られる。2022年の英国で起きた混乱が有名で、それを当時のトラス首相の名前から「トラス・ショック」と呼んでいる。
記事の内容を簡単に言えば、「日本でも一時的に似たような状況になる可能性はあるが、本格的なトラス・ショックになる可能性は低い」というものだった。
まず、ドル円150円は当たった
為替については、短期的にはドル円が150円前後まで上昇する可能性がある一方、その後は円高に向かい、2025年10~12月期には140円を下回るという予想だった。
さて、実際どうなったのか。
まず「ドル円が150円前後まで上昇する」というところは当たった。2025年10月には150円台に入り、さらに10月末には154円前後まで上昇している。
ここまでは予想どおりだった。
予想と結果を比較すると
2025年6月時点の予想と、その後の結果を並べてみると、かなり分かりやすい。
| 項目 | 2025年6月時点の予想 | 実際の結果 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ドル円 | 数カ月以内に150円前後まで上昇 | 2025年10月に150円台、さらに154円前後まで上昇 | ○ |
| その後のドル円 | 2025年10~12月期に140円割れ | 140円割れせず、150円台で推移 | × |
| 日本10年金利 | 一時的に2%前後まで急上昇する可能性を警戒 | 2026年9月に3%まで上昇 | × |
| 金利上昇と円相場 | 日本金利の上昇は最終的に円高要因になる | 金利上昇後も円安が続き、2026年9月は156円前後 | × |
| トラス・ショック | 本格的なトリプル安になる可能性は低い | 英国型の金融危機には至っていない | ○ |
こうして見ると、短期的な「150円前後」という予想は当たったものの、その後の「140円割れ」という本命シナリオは外れている。
ところが、140円割れは来なかった
記事では2025年10~12月期に140円を下回ると見ていたが、実際には140円割れにはならなかった。150円台で推移し、その後も円安が続いた。
つまり、「150円前後まで円安になる」という短期的な予想は当たったものの、「そこから140円を割る」という本命のシナリオは外れたことになる。
さらに2026年に入ってからを見ると、この予想とのズレはもっと大きくなっている。
日本の金利は、予想以上に上がった
この記事では、日本の10年国債利回りが「一時的に2%前後まで急激に上昇する」ケースをかなり警戒していた。
ところが2026年9月には、10年国債利回りが3%まで上昇している。
記事が警戒していた水準を大きく超えてしまったわけだ。
それでもドル円は140円ではなく、9月現在で156円前後。
ここはかなり興味深いところだと思う。
「金利が上がれば円高」ではなかった
記事の考え方では、日本の金利が上昇すると、日本国債を買う国内投資家が増えて海外投資が抑えられ、その結果として円高になっていくという流れだった。
ところが実際には、日本の金利が3%近くまで上がっても円安が続いている。
もちろん、「金利が上がれば必ず円高になる」というほど為替は単純ではない。米国金利や日銀の政策、インフレ、財政への懸念、円キャリートレードなど、いろいろな要因が絡んでくる。
特に重要なのは、日本の金利が「なぜ」上昇しているのかということだろう。
景気が良くなって金利が上がるのと、インフレや財政への不安から金利が上がるのとでは意味が違う。後者なら、金利が上がっているのに円が売られるということも十分あり得る。
では、トラス・ショックはどうだったのか
では、この記事が警戒していた「トラス・ショック」はどうだったのか。
今のところ、英国で起きたような本格的な金融市場の混乱にはなっていない。
日本では債券安と円安が同時に進む場面はあったが、株式市場まで継続的に崩れるような典型的なトリプル安にはなっていない。
その意味では、「日本が本格的なトラス・ショックになる可能性は低い」という見方は、今のところはそれほど外れていないと思う。
ただ、そうなっていない理由については、少し見方を変えた方がいいのかもしれない。
予想を振り返ってみると
2025年の記事を現在から振り返ると、短期的な方向感は当たった一方で、中期的な為替予想はかなり外れた。
「150円前後まで円安になる」→ 当たり。
「その後140円を割る」→ 外れ。
「日本の金利上昇は最終的に円高要因になる」→ 少なくとも現時点では、その通りになっていない。
そして現在は、日本の10年金利が3%まで上がっているのに、ドル円は156円前後という状況になっている。
これは2025年の記事を書いた時点で想定されていたシナリオとはかなり違う。
これから気になるのは「140円」よりも金利
結局、この予想を振り返って一番気になるのは、「日本の金利が上がれば本当に円高になるのか」というところだ。
2025年の記事では、金利上昇は最終的に円高につながると考えていた。しかし2026年9月の時点では、少なくともその通りにはなっていない。
今後、日本の金利上昇が本当に円高につながるのか。それとも金利がさらに上昇しても円安が続くのか。
140円という数字を当てることよりも、こちらの方が今の日本市場を見るうえでは重要なポイントだと思う。






